(リフォーム産業新聞)
【家価値サポート社長インタビュー】440社の点検引き受け
家価値サポート
中林昌人 社長
リフォーム産業新聞 1387号 (2019/12/02発行) 16面
アフターメンテナンスのアウトソーシングを行う家価値サポート(東京都品川区)。現在440社と契約し、家の資産価値を守るセーフティネットとしてサービスを展開している。中林昌人社長に、アフターメンテナンスの重要性と今後の展望を聞いた。
適正なメンテを普及
――アフターメンテナンスのニーズは高まっているのでしょうか。
私はハウスメーカー出身ですが、新築を建てて10年が経過したお客様たちの多くが、その後の家のメンテナンスに不安を感じていました。法律的に10年は定期点検をしてくれるけれど、それを過ぎたら知らん顔という業者が多いからです。さらに、そこに目をつけ、悪質な営業をかける業者もいるので、お客様からすればどこに点検を頼めばいいのかわからなくなってしまう。適正なメンテナンスサービスを求めるユーザーは今後も増え続けると思います。
――ハウスメーカーは点検を仕組化していますが、そこが安心感につながっています。
ハウスメーカーなどは、60年間の定期点検をウリにしているところも多いですよね。そこに魅力を感じて、多少価格が高くてもハウスメーカーに依頼するというお客様も実際に多かった。ハウスメーカーの営業マン時代は、私自身もアフターサポートの年表をクロージングの武器にしていました。
――維持管理をすることにより、今後資産価値に影響がでる可能性もあります。
ストック流通が増えるこれからの時代を考えれば、資産価値の観点でも、維持管理の重要性は上がるはずです。たとえば、関東大震災の3倍の揺れに耐えられる家であれば、維持管理さえされていれば、その性能は20年経っても変わらない。一方で、同じ価格で建てた家でも、維持管理がされていなければ20年後の資産価値は0に等しい。どちらが得策かは、説明すれば誰でも理解できるはずです。
5年ごとに訪問
――「家価値サポート」では60年のメンテナンスを外注できるわけですね。
ビルダーやリフォーム会社といった契約会社から委託を受け、5年ごとにお客様のところへ出向いて点検し、メンテナンス計画の作成や住宅履歴の管理・更新を行っています。リフォーム会社は手間をかけずに受注が取れますし、お客様は定期点検のおかげで適切なリフォームができます。
――メンテナンス計画はどのように立てるのでしょうか。
その家ごとに見合ったメンテナンス計画を立て、処方箋通りに点検、修繕を行っていきます。そしてその履歴を当社が記録として預かります。資産価値の観点で特に重要視するのは、耐震性と断熱性の維持。基準にするのは性能表示制度です。
――現在、契約会社数はどれくらいですか。
約440社で、動いている物件は2000戸くらいです。定期点検10年分の初期設定は約30万円~。この中には5年目の防蟻費用も含まれます。日本長期住宅メンテナンスと連携し、防蟻の点検・処理についてはお任せしています。
資産価値向上を
――ただ、まだまだメンテナンス費用を定期的にかけているユーザーは少ない。費用を提示した際の反応はどうでしょう。
嫌な顔をする人もいます。ただ、メンテナンスをすることで30年後の資産価値がどうなるのかを提示するのは、建築業界の良心ではないかと思っています。第三者的な家の維持管理業社として見守ることで、ユーザーは家の資産価値を保て、買う人も価値のある家が手に入る。そうした良いループを作ることが、日本の既存住宅流通に一番必要なことではないでしょうか。
――定期的なメンテナンスにかかる具体的な費用はどのくらいと想定していますか。
年間平均28万円です。今後はオプションとして、修繕積立金の積立モデルを作る予定です。これが実現すれば、建築業界と維持管理業界がタッグを組んでお客様に適切なサービスを提供できるようになります。
――今後の展望は。
まずはリフォームネットワークと連携し、工事をしっかりと回せるようにすること。あとは、維持管理の出口として、不動産会社とのネットワークを構築することです。不動産会社と連携できれば、「本当にこの値段で売れるの?」というユーザーの不安も解消できる。きちんと維持管理された物件に適正な査定金額が付くように、中古流通の仕組みそのものに切り込んでいきたいと思います。